SMパートナー募集したら、本当に価値観の合うドM女性が現れた話(前半)
1. はじめに|“SMパートナー募集”という言葉の重さ
最初に「SMパートナー募集」と検索窓に打ち込んだとき、自分の中ではまだ半信半疑だった。
「そんな人、本当にいるのか?」
「もし出会えたとしても、価値観が違ったらどうしよう」
そんな不安と好奇心が入り混じっていた。
SMという言葉には、誤解が多い。
多くの人が“痛み”や“暴力”を想像するけれど、本質はそこではない。
むしろ、相手を信じ、相手に委ねる深い信頼の関係が根底にある。
支配と服従ではなく、支え合いと理解の形がそこに存在している。
そんな関係を本気で築ける相手と出会いたい──
そう思い、僕はSNSと掲示板を使って、静かに「SMパートナー募集」という言葉を投稿した。
2. 募集を始めたきっかけ
きっかけは、恋愛の延長では満たされない“心の奥の欲求”だった。
一般的な恋愛では、互いに優しく接し、思いやり合う。
それはもちろん素晴らしいけれど、どこか自分の中で「もっと深い信頼を確かめたい」という気持ちがあった。
SMに興味を持ったのは、単なる刺激を求めてではなく、「人間の本音に向き合う」ためだったと思う。
相手の弱さや恐れ、欲求の奥にある“素の部分”を見たい。
そして自分自身も、表面的な優しさだけでなく、本音の部分で誰かとつながってみたかった。
「支配したい」という言葉は誤解されがちだ。
僕の場合、それは相手を思い通りに動かしたいという意味ではない。
むしろ、相手のすべてを受け入れる覚悟を持つこと。
その“覚悟の証”として、Sという立場を選んでいるにすぎない。
3. 募集の投稿と最初の反応
投稿内容は、派手なものではなく、淡々とした自己紹介から始めた。
・年齢や職業
・自分がSとしてどんな考えを持っているか
・相手に求めるのは「従順さ」ではなく「信頼関係」
それを読んで、本気で反応してくれる人がいるとは正直思っていなかった。
だが投稿から数日後、通知が鳴った。
「初めまして。投稿を読んで、正直に惹かれました」
短いけれど、どこか誠実さを感じるメッセージだった。
彼女の文面は丁寧で、派手な言葉は一切なかった。
ただ、「信頼できるSの方と、安心して関係を築いてみたい」と書かれていた。
僕はすぐに返信を送る前に、何度もその文章を読み返した。
──ようやく、本気の人が現れたのかもしれない。
4. メッセージのやり取りと信頼の芽生え
最初の数日間は、お互いに自己紹介と考え方の交換だった。
彼女は自分を「ドM」と表現していたが、それは単に“命令されたい”という意味ではなかった。
彼女にとってのMは、「誰かの期待に応えることが喜び」であり、「安心できる人に心を委ねたい」という心のあり方だった。
その言葉を聞いた瞬間、僕の中で何かが繋がった気がした。
“従わせる”ではなく、“導く”。
そして、“服従する”ではなく、“信頼する”。
この相互の意識こそが、本来のSM関係に必要なものなのだと思う。
彼女とのやり取りの中で、印象的なやり取りがあった。
「私にとって大事なのは、命令の内容ではなく、命令を出す人の“温度”なんです」
その一文を読んだとき、僕は本当に心を動かされた。
“温度”という表現は、まさにSM関係の本質を突いている。
命令の厳しさよりも、そこにある“人の優しさ”や“想い”を感じ取っているのだ。
彼女の感性の深さに、僕は静かに惹かれていった。
5. 初めての対面
数週間後、互いの信頼が十分に育ったころ、初めて会う約束をした。
待ち合わせ場所は人目の多いカフェ。
「お互いが本当に信頼できる相手かどうか、ちゃんと顔を見て確かめたい」
そんな意識で臨んだ。
彼女は、文章から想像していたよりも穏やかな雰囲気の人だった。
目を合わせると、少し恥ずかしそうに笑う。
ただ、その瞳の奥には“覚悟”のような強さが感じられた。
会話の内容は、一般的なものが多かった。
仕事の話、趣味の話、休日の過ごし方。
でも、不思議なことに、普通の話の中にも“信頼の呼吸”のようなものがあった。
一緒にいるだけで、自然と空気が穏やかになる。
僕が「無理してない?」と聞くと、彼女は笑ってこう言った。
「Sさんといると、変に構えなくていいんです。ちゃんと受け止めてもらえる気がして」
その瞬間、僕は“この人を本気で大切にしよう”と心に決めた。
この関係は一方的な支配ではなく、お互いを理解し合うための信頼の実験のようなものだと感じた。
6. 信頼の関係を築く日々
出会ってからの数週間、僕たちは定期的に会い、メールを重ねた。
その中で決めた最初のルールがある。
- どんな時でも「嫌なこと」「不安なこと」は必ず伝える。
- どちらかが不安を感じたら、すぐに距離を置く。
- “支配”はお互いの心を守るための約束であり、目的ではない。
これらのルールを共有してから、彼女の表情は少しずつ柔らかくなった。
信頼とは、約束を積み重ねることでしか育たない。
僕はそのことを改めて実感した。
彼女は時々、自分の過去を話してくれた。
「過去にSMに興味を持って失敗したことがある」と。
軽いノリの相手に傷つけられた経験があるらしい。
だからこそ、今回は“本当の信頼関係”を築ける相手を探していたのだ。
「支配されたいんじゃなくて、安心して“委ねたい”んです」
その言葉を聞いた瞬間、僕は心の奥で強く頷いた。
彼女にとってのドMは、痛みや屈服ではなく、心の信頼の証。
それを正しく理解してあげられるSでありたいと思った。
7. 互いの世界が重なる瞬間
僕が何かを指示したとき、彼女はすぐに「はい」と答える。
けれどその返事には、恐れではなく“安心”があった。
それがわかった瞬間、僕はこの関係が本物だと確信した。
SMという言葉は誤解を生むが、僕たちにとってそれは「心の対話」だ。
彼女が“従う”ことで僕を信頼し、僕が“導く”ことで彼女を守る。
この関係は、どちらかが上でどちらかが下という単純なものではない。
人は誰でも、日常の中で“自分を預けられる場所”を求めている。
彼女にとってそれがこの関係であり、僕にとってもそうだった。
「支配すること」と「支えること」の境界は、実はとても近い。
相手を理解し、尊重できるからこそ、その関係は成立する。



























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